2025 10.8 wed., 10.9 thu., 10.10 fri.
KASSA OVERALL
artist KASSA OVERALL
原田和典のBloggin' BLUE NOTE TOKYO
衝撃の初登場公演から、早くも5年。規格外のドラマー/プロデューサーであるカッサ・オーバーオールがブルーノート東京に戻ってきてくれました。入魂の最新アルバム『CREAM』が出たばかりという、絶好のタイミングでの来日です。
『CREAM』は、カッサの根っこにあるヒップホップとモダンジャズの双方に愛を寄せた作品といっていいでしょう。私は"ヒップホップの楽曲をモダンジャズのマナーで演奏する"というアイデアに"混ぜ合わせではなく、そういう方法があったのか"と半ば感嘆しつつアルバムを楽しみましたが、ライヴでは当然ながら各曲が伸長・発展、いっそうカッサたちが持つ先人ジャズメンへの敬意(ジョン・コルトレーン、マッコイ・タイナー等)を感じながらのひとときを満喫することができました。
ライヴでは『CREAM』の楽曲が順にプレイされ、その後、エクストラ・トラックとして旧作からのナンバーが取りあげられました。オープニングは、エディ・ハリス(彼はジャズのサックス奏者でヒップホップのミュージシャンではありませんが)作の「FREEDOM JAZZ DANCE」。バスドラ、コンガ、ハンドクラップのような音を出すエフェクトシンバルなどで構成された独自のセットで演奏するベンジ・アロンセと、小さめの口径のバスドラを踏み込むカッサのリズムががっちりと揃い、そのうえでエミリオ・モデスト(昨年、ジュリアス・ロドリゲスのバンドで来日)のテナー・サックス、マット・ウォンのピアノ、急遽参加となったシンサカイノのベースが自在なプレイで迫ります。間髪を置かずに続いたのは、ノトーリアス・B.I.G.の「BIG POPPA」。原曲通り、アイズリー・ブラザーズ「BETWEEN THE SHEETS」のリフを用いながら、ボサノヴァ調のリズムに乗せたプレイが繰り広げられました。ウータン・クランの「C.R.E.A.M. (CASH RULES EVERYTHING AROUND ME)」は真正面からの4ビート・ジャズとして解釈され、カッサの、エルヴィン・ジョーンズを思わせる当たりの柔らかいシンバル・レガートが鮮やかな光を放ちます。
"ここからB面に突入だ"というカッサの声から、ドクター・ドレーの「NUTHIN BUT A "G" THANG」が始まります。アルバムではフルートがフィーチャーされていましたが、この日はエミリオのエフェクトをかけたテナー・サックスが存在感を放ちます(彼はこの日、テナーを2本持参していました)。ここからジュヴィナイルの「BACK THAT AZZ UP」に至る流れは、まさに"一気呵成"といったところ。噴き出るようなモダンジャズで場内のテンションを思いっきり高めた後、前作『ANIMALS』からヴォーカル&ラップ・ナンバー「Ready To Ball」をじっくりパフォーマンスして初日ファースト・セットの幕は閉じました。
コットンクラブではブライアン・ブレイド・フェロウシップの公演が始まっていますが、ここブルーノート東京で開催されているカッサのライヴと合わせて体験すると、リズムの広がり・ドラムの面白さ・グルーヴの魅力などが、さらにヴィヴィッドに体験できることでしょう。カッサの来日公演は10日まで続きます。
(原田 2025 10.9)
Photo by Tsuneo Koga
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【LIVE INFORMATION】
KASSA OVERALL
2025 10.8 wed., 10.9 thu., 10.10 fri. ブルーノート東京
coming soon